国立国会図書館デジタルコレクションは、膨大(数百万)な蔵書を自宅のPCから読めるので、非常に重宝しています。
私の最高の暇つぶし。

で、その蔵書の中で最古の「アイスコーヒー」の文献はなんだろうと気になって調べてみました。
「アイスコーヒー」で検索しても最近の本しかないし
「冷やし珈琲」で検索してもゼロ。
「冷し珈琲」ならどうかなと思ったら一冊ヒット。

明治40年 「弦斎夫人の料理談」 著者 村井多嘉子

弦斎って「食道楽」書いた明治~大正のジャーナリストの、村井弦斎かな。すると、その奥さま。
体裁的には、雑誌記者さんが村井多嘉子さん宅に伺って、教えてもらったレシピを記者さんが会話調にまとめたもののようでした。
読んでみたら「冷し珈琲は如何にして造るか」という項目がありました。
それによると、酷暑の日(炎熱 燃ゆるが如く)、記者さんが夫人の家に行ったら
席に着くやいなや、女中さんが「冷し珈琲」を出してくれたんだそうな。
で、一口飲むと

涼気 肌に生じて 佳味芳香 口を離れず

興奮した記者さんが夫人に

「このコーヒーは味がよくって何とも申されませんが、これはどういう風におあつらえになりますか」

と質問した回答レシピがありました。
その内容が、現代に住む私には

そんなの有りなんですかー!

と思うレシピだったんで、作ってみることにしました。

まず、材料。

珈琲(当然ながら)。

記者の質問「(これを作るのは)珈琲はなんというのが、ようございますか」

夫人「モカというのが、ようございます」

モカ…実は私は酸味が苦手なんだなー。
でも夫人のオススメだし。
されど、実験的な内容だし。

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ご近所スーパーでいちばん安かった「モカブレンド」にしました。

夫人「まず、鍋の中へ一人前につき、茶さじなら三杯、大さじなら一杯のコーヒー粉を入れます」

いきなり鍋ですか(記者になる私)。

夫人「そこへ、卵の白身を入れます。他の事に使った卵の殻を、白身が少し残るようにしておいて、その殻を一人前につき、三つ使います」

卵ですか!?

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卵の殻を三個分…。
とりあえず先にオムレツ作るか…。

夫人「殻は珈琲の中に入れてよくつぶし、そこへ大さじ二杯の冷水を加え、珈琲と殻をよく混ぜます。それを火にかけて、二~三分グツグツ煮立てます」

先生!
この量の珈琲を、大さじ二杯程度の冷水で数分煮立てたら、鍋に焦げ付いてしまうのではないでしょうか。
明治時代と現代って火力が違うんかな。

先生が信じきれない私は

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200㏄くらいの水で煮立てました。

夫人「煮立っている熱湯を一合ほどさして、すぐにホンの少し冷水を入れますと、珈琲がよく澄みます」

先生、ホンの少しってどれくらいでしょう。
テキトーでいいや…。
あ、かなり入ってしまった。

夫人「これを丁寧にフランネルで濾します」

先生、ありません。
珈琲フィルターでいいか。文明の利器だし。

夫人「そこに牛乳と砂糖を入れて冷やします。このレシピは、牛乳が多すぎると味が悪くなります」

先生、でしたら具体的な量を教えてください。

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250㏄くらいでいいかなー。
砂糖は無しでいいような気もするけど(私は甘い珈琲が苦手)、気持ち程度入れておくか。

夫人「氷箱で冷やしましょう」

冷蔵庫で一晩おいておきます。

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翌朝~。

そして、これで仕上がりではないんですよ。
なんと先生いわく

「飲む時には、瓶に注いでレモン油をホンの一、二滴落として、チョイと混ぜて出しますと、いっそう味がようございます」

コーヒーにレモンー!
私的にはそれは無い。
しかも、レモン油なんて、そのへんに売って無い。

でも、なにごともチャレンジ精神が必要。

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愛用のレモン果汁を一滴垂らしてみました。
ちょっとキワモノ的ドリンクになってしまった感が。

いただきます。

おいしー!

例えるなら、暑い夏、高原で立っていたら涼しい風が吹きぬけて行った、そんな快感と申しましょうか。
ためしに、レモン無しのも飲んでみたのですが、これは絶対レモン有りの方が美味しい(「涼しい風が吹き抜けて行った」のはきっとレモンだと思う)。
そして、甘めの方がさらに美味しいです。

比較のため、同じコーヒー粉で普通に淹れて飲んでみましたが、味が全然違う。
卵の殻が、モカのとんがった酸味を抜いたような感じです。

実は今年の夏はコレにはまり、一生懸命玉子焼き作りました(殻目当て)。

来年は、レモン油を買って本式に作ってみたいと思っております。
でも売ってないんだなー。


この本、こんな感じになかなかスゴイレシピがいろいろ載ってまして、全部作ってみたい欲求にかられる魔力があります。

桃のフライとか…。